JR東日本の豪華クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」
先日、KATOよりJR東日本「E001形 TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」のNゲージモデルが久々に再登場することが発表されました。
とはいえ以前に製品化された当時、まだNゲージを始められていなかった方、さらには「四季島という名前は聞いたことあるけど…」という方には、この「四季島」のNゲージモデルの久々の再登場について、あまりピンとこないかもしれませんね。
この「四季島」という車両は運行ルートが東日本中心ということもあり、それ以外の地域にお住まいの方は、まず目にする機会がありません。それ故に「四季島」についてご存知ない方もいらっしゃるのではないかと思います。
そこで今回は、この「四季島」について詳しくご紹介したいと思います。
JR東日本が送り出した「特別尽くし」の豪華クルーズトレイン
2013年10月15日に登場したJR九州「ななつ星in九州」に続き、日本で2列車目になる本格的クルーズトレインとして2017年5月1日に登場した「TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」。
列車名の「四季島」は日本の古い国名「敷島」に由来しており「美しい四季と伝統を感じながらの旅を連想させ、時間と空間の移り変わりを楽しむ列車に」という想いが込められています。
「四季島」は乗客数最大34名のためだけに運行、そしておもてなしがされる「豪華クルーズトレイン」。その出発地点もまた「特別」です。
まず、発着駅となっているJR上野駅には「四季島」の乗客専用の改札を設置。
そして上野駅の13番線ホームには「四季島」の出発までの時間を過ごすことができる専用の待合室「プロローグ四季島」も設けられました。
上野駅の13番線ホームと言えば、かつて東北・北海道方面へと運行した寝台列車「カシオペア」や「北斗星」、「あけぼの」が使用していたホーム。
となると乗客はどこから「四季島」に乗車するのか?
その答えは13番線と14番線の間に新設された「新たな旅立ちの13.5番線ホーム」というもの。
「駅のホームってそんな急に新設できるものなの?」と思いますが、これには理由が。
先にご紹介した通り上野駅13番線ホームは以前は東北・北海道方面の寝台列車が利用していたホームでは昔、旅客列車に連結されていた荷物車に積まれていた荷物を下ろすための専用ホームがあり、荷物輸送の廃止に伴って使われなくなったホームがそのまま残っていたのですね。
もちろん、荷物専用なので通常のホームに比べれば、やや小さい訳ですが「四季島」の乗客は最大34名。
問題なく再活用できるホームとして「新たな旅立ちの13.5番線ホーム」として生まれ変わり「四季島」の旅のスタート地点となった訳です。
さらに「四季島」の注目すべきところは、やはり独創的で一度見たら忘れられないインパクトある車両のデザインですよね?
先頭と最後尾の車両のデザインもそうですが、その他の車両の側面にも小さい窓がランダムに配置されるなどして、一般的な車両ではお目にかかれないデザインがまた面白いですね。
ちなみに「四季島」は10両編成ですが、実は乗降口は、ラウンジを構える車両中央の5号車のみ。
「四季島」が停車した際にとらえた5号車の画像がありますので、そちらを見ながら想像していただければありがたいのですが、「四季島」の出発時にはJR上野駅のホームにはレッドカーペットが敷かれ、車掌とトレインマネージャーが迎える中、乗車するのだそうです。
さて、これまで豪華クルーズトレインでは「ななつ星 in 九州」など、濃色で深みのある色が多く採用されていましたが「四季島」は外観塗装にはシャンパンゴールドを基本として特別に調合された「四季島ゴールド」という気品もありつつ爽やかな明るい色が使われています。
「四季島」のデザインを手掛けたのは、山手線E235系や、秋田新幹線E6系、北陸新幹線E7系、そして東武500系「リバティ」などのデザインも手掛けた奥山清行氏。
これまでの車両とは異なるデザインやカラーを大胆に取り入れるなどして、一目見るだけで強く印象に残る、唯一無二の車両を多く生み出しています。
電化区間でも非電化区間でも自走できる柔軟性のある旅客車両「四季島」
「四季島」は車両のデザインだけではなく、実は車両自体の性能にも注目すべき点があります。
実は線路上空に電気の流れた架線がある区間(電化区間)と架線がない区間(非電化区間)を走行できる「EDC(Electric Diesel Car)方式」が採用された車両なんです。
電化区間は、車両屋根上に搭載するパンタグラフを用い、架線から車両へ電気を取り入れ、モーターを駆動させて走行する、皆さんがよくご存知のスタイルですよね。10両編成の「四季島」のうち、2・3・8・9号車にパンタグラフが搭載されており、電化区間の走行を担います。
そして非電化区間は、文字の通り、電気を供給する架線がないため、車両に搭載するディーゼル発電機で生み出した電気でモーターを駆動させて走行するスタイル。「四季島」の場合は先頭車両と最後尾の車両に発電機が搭載されており、架線のない区間を自走する役割を担います。
この「EDC方式」を採用したことで、機関車にけん引されることなく、自力で走行が可能となったことで、「四季島」は従来の旅客車両よりも、運行ルートのバリエーションに自由度が増したと言われています。
そして「四季島」の性能として最大のポイントは「青函トンネルを自走できる旅客車両」ということ。
2016年3月に北海道新幹線が開業したことから、青函トンネルが在来線専用から新幹線との共用になりました。
そこで新車両となる「四季島」は、電化・非電化問わず走行できることに加えて、北海道新幹線が走行に使用する電気や保安装置、さらにJR北海道在来線の保安装置に対応する旅客車両として、青函トンネルを自走し、北海道まで走行できる非常に柔軟性のある旅客車両となった訳です。
ちなみに「四季島」では、運転士が度々、交代します。理由は走行する各エリアで土地勘のある運転士が運転を担当するから。
それぞれの土地で、例えば揺れが大きくなるエリアなど、その土地ならではの様々な「特徴」があります。
そこで、その「特徴」を熟知した運転士が運転を担当することで、揺れが発生しやすいポイントでは、揺れを最小限に抑える走行を行い、さらにビューポイントでは乗客に車窓の風景を楽しんでもらうために速度を落としながら走行するなど、それぞれの土地に合わせた運転を行うことで、快適な鉄道の旅の一翼を担っているのです。
実は鉄道車両の運転免許は車両の駆動方式などから細かく分けられていて、電車と気動車の免許は別々の資格となっています。
電車・電気機関車の免許は「甲種電気車運転免許」
気動車・ディーゼル機関車の免許は「甲種内燃車運転免許」
さて、ここで疑問が生まれました。
「四季島では度々、運転士の方が交代するので運転士の確保は重要なポイント。ならば電化区間でも非電化区間でも自走できる四季島の運転免許はどうなるの?」
実は「四季島」の場合は、例えば、電車の免許保持者であればエンジン関連の知識、そして気動車の免許保持者であればモーター関連の知識など、運転士の持つ免許の種類に応じて必要な知識と訓練を補うことで、車両の運転を可能としています。
つまり、2種類の免許のうち、どちらかひとつの免許があれば「四季島」は運転できるという訳です。
さて、様々なこだわりの光るハイグレードなおもてなしを体験できる「四季島」ですが、客室のタイプや滞在する日数により旅行代金も異なります。
例えば1泊2日のコースであれば、最上級の客室「四季島スイート」は50万円、デラックススイートは45万円、そして標準的な客室の「スイート」は37万円という価格です。豪華クルーズトレインということで、旅にかかる費用もやはりハイグレード。なかなか気軽に体験するのは難しい車両かもしれません。
そうなれば今回、製品化が発表されたNゲージモデルを手に入れて、ご自宅で楽しむのはいかがでしょうか?
特徴的な先頭と最後尾のデザインはもちろんのこと、中間車両の窓のデザインや、何よりこの車両のためだけに作られたカラーである「四季島ゴールド」を、Nゲージなら、いつでもお好きな時に存分に楽しめますね。
今回、「四季島」のNゲージモデルは久々の登場となっていますので以前、手に入れられなかった方には、是非おすすめしたいアイテムです。
今回は、JR東日本のE001形TRAIN SUITE 四季島についてご紹介しました。