近鉄16200系 観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」
先日、グリーンマックスより近鉄16200系 観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」の製品化が発表されました。
近鉄こと近畿日本鉄道株式会社と言えば、大阪府・奈良県・京都府・三重県・愛知県で鉄道事業を行う日本の大手私鉄のひとつ。
例えば、三重の伊勢志摩・鳥羽エリア、さらに奈良・京都など、観光エリアが沿線上にいくつかあることから「観光特急」にも力を入れている鉄道会社でもあります。
今回、製品化が発表された近鉄16200系「青の交響曲」は、2016年9月の登場以来、大阪阿部野橋から奈良県の吉野との間を結ぶ観光特急として、活躍しています。
奈良県の吉野と言えば、全国的に桜の名所として有名な吉野山があるところで、日本古来のヤマザクラを中心として、約200種、3万本とも言われる桜が4月の上旬から中旬にかけて咲き誇ることから、県内外から多くの人が訪れる場所でもあります。
とはいえ、関西中心に運行している車両のため、それ以外の地域の方には、あまり馴染みがない車両かもしれませんね。
そこで今回は、近鉄の観光特急「青の交響曲」についてご紹介したいと思います。
「上質な大人旅」にふさわしい観光特急として誕生した「青の交響曲」
「青の交響曲」は、歴史・文化、自然や食など、自然豊かな南大阪線・吉野線沿線の魅力と調和し、響き合いながら走る「青色の列車」として、これまでにない「上質な大人旅」にふさわしい癒しと寛ぎを提供する、新たなコンセプトの観光特急として誕生しました。
車体のデザインについては、運行するエリアの自然溢れる景観に調和するように、シンプルで上質な落ち着きのある濃紺色をベースに、ゴールドのラインが光る、クラシカルな外装に。
そして「Blue Symphony」と記されたエンブレムが車両の前面と側面に配置されていますが、このエンブレムの下部分の装飾は吉野山の木々や草花を象徴する繊細でエレガントな印象をかたどっています。
確かに色やデザインに「気品」が感じられる「上質な大人旅」にふさわしい車両ですね。
そんな「青の交響曲」ですが、車内の方も趣向を凝らしたデザインになっていますので、せっかくですのでそちらもご紹介しましょう。
「青の交響曲」は3両編成で、1号車、3号車は座席スペースに。2列+1列のシートは、幅広のデラックスシートの仕様となっており、車内の床には、じゅうたんが敷かれています。
そして2号車は「ラウンジ車両」として、バーカウンターで注文した飲み物を片手にソファに腰掛けて、窓から外の景色を楽しんだり、もしくは同行する方々とトークで盛り上がるなど、乗客それぞれが楽しめるスペースとなっています。
ちなみに「青の交響曲」では、こちらの「ラウンジ車両」で飲み物、軽食、おみやげを取り扱うだけでなく、車内サービスでは様々なオリジナル鉄道グッズを揃えるなど、乗車した方だけが手にすることができるアイテムが豊富に取り揃えられています。
数量限定で発売されているものは、早々に完売してしまうものもあるようですが、取り扱いアイテムの詳細情報は公式サイトに掲載されているので事前にチェックできるところも嬉しいですね。
こちらの2両目の空間には「ライブラリー」という奈良の歴史に関する本や写真集など「青の交響曲」が運行する沿線にまつわる様々な書籍が自由に閲覧できるスペースも設けられています。
書籍がおさめられている棚の前には、アンティークなベンチも用意されていますので、そちらに腰かけて、気になる書籍を手に取ってゆっくりと目を通すのも良さそうですね。
「青の交響曲」が特急車両ではなく一般車両を改造した理由
先にご紹介したように「青の交響曲」は車両の様々な箇所にこだわって造られた近鉄の「観光特急」。
「そういえば…近鉄で、上品な佇まいで車両のデザインにもこだわった観光特急がもうひとつ、ありましたね?」
2022年4月から運行を開始した近鉄19200系 観光特急「あをによし」。
「あをによし」については以前、こちらでも詳しくご紹介したのでご記憶にある方もいらっしゃるかもしれませんね。
こちらの車両は日本の歴史や文化、食の楽しみにあふれる大阪難波から奈良を経由して京都までの間を乗り換えなしで結ぶ観光特急。そして「スナックカー」の愛称で親しまれた近鉄特急12200系を改造して誕生した観光特急ということも話題となった車両です。
ちなみに「青の交響曲」も改造されて誕生した観光特急なのですが…
「一般車両(通勤形電車)を改造しました」
え?「青の交響曲」は「観光特急」なのに…何故?
これは、考えに考えて、たどり着いた結果なのです。
というのも「青の交響曲」は計画の段階から「大人同士でゆったり楽しむ観光列車」とするため、先にご紹介したように座席スペースの車両を2両、そしてラウンジ車両を1両というように3両編成にすることに。
ところが特急車両は2両単位の偶数両数での運用しか出来ないことが判明したため、代わりに一般車両である6200系を改造することにして3両編成としたのです。
「特急車両が偶数両数での運用しか出来ないのならば、4両編成という案は?」
仮に4両編成した場合、桜で有名な奈良の吉野は確かに春は多くの利用者が見込めるのですが、それ以外の季節での利用者は未知数。
ここで考えなくてはいけないのが、列車の運行はするものの、乗客が当初予定していた利用者数を大きく下回るケースです。これが続くと収支のバランスが崩れ、車両の運行自体に影響が出ますから、これは避けたいですよね。
逆に2両だけの編成となると、今回の観光列車のテーマでもある「ゆったり楽しむ空間」へと改造するには車両の空間自体が足りず、窮屈な車内空間となってしまう可能性があり却下された訳です。
「なるほど。年間を通して現実的な利用者数を考慮して導き出された車両数が3両編成で、その結果として一般車両を改造することになったんですね」
結果、南大阪線系統で運用されていた近鉄の6200系の中から車体更新時期に差し掛かっていた3両編成の車両を選んで改造することが決まりましたが、もうひとつ問題になったのが…
「1車両につき、乗降ドアが多い問題」
近鉄の一般車両はいわゆる「通勤形電車」なので、乗り降りがしやすいようにドアの数が多く、1つの車両の片側だけでも4つドアがあります。
さすがに片側に4つのドアは多すぎるので改造の際に片側1つだけドアを残して後は改造の段階で埋めることに。この埋められた部分については、元々あった扉の幅と同じ1.3メートル幅の固定窓を設置することにしたのです。
このことを踏まえて、再度、車両の側面にある窓に注目して見てみると…
「ひとつ、ひとつの窓の幅が交互に少しずつ違いますね」
一瞬見ると分からないですが、こうして窓に注目してみると、かつて一般車両の元々の窓の幅と、さらに乗降ドア部分だった箇所が見て取れて面白いですね。
さて、「上質な大人旅」にふさわしい観光特急となるために、既存の車両を元にして改造を経て誕生した近鉄の観光特急「青の交響曲」。ご紹介したように車両のデザインには様々なこだわりが見られ、なかなか魅力ある車両だと思いませんか?
ここはひとつ、Nゲージモデルの「青の交響曲」の姿を様々な角度から楽しんで、ご自宅で走らせるというのはいかがでしょうか?
他の観光特急とはまた違った気品ある雰囲気の車両は特別感もあるため、Nゲージモデルを鉄道模型としてコレクションに加えて楽しむのも、おすすめです。
現在、ご予約受付中ですので、ぜひこの機会をお見逃しなく!
今回はグリーンマックスよりNゲージモデルの製品化が発表された近鉄16200系 観光特急「青の交響曲」についてご紹介しました。
2016年9月に近鉄南大阪線 吉野線の大阪阿部野橋-吉野間を走る観光特急列車として誕生した近鉄16200系「青の交響曲(シンフォニー)」。車両は6200系を改造した3両編成、車体は濃紺色のボディにゴールドのラインとロゴを配したクラシカルな車両となっています。
2022年4月から運行を開始した観光特急「あをによし」。車体には正倉院の宝物をモチーフにした天平文様などがデザインされるなど「奈良の和」の美しさ、尊さを表現した唯一無二の車両となっています。